認知症の患者さんの「心」について思う

認知症の患者さんは、何を考え何を感じているのでしょうか。
「何も考えていない、何も感じていない」、そういう訳ではありません。
確かに変性型認知症(脳に蛋白のゴミがたまり、脳が少しずつ壊れていく病気。例;アルツハイマー型認知症)では一般に病識(自分の病気に関する客観的な認識)が乏しく、周囲が大いに困り心配しているのに本人は平然としているように見えたりします。
それどころか、怒りっぽくなったり、妄想が出てきて周囲を慌てさせたりします。

確かに、患者さん自身は、自分が病気とは思わず、病状を過少評価していることが多いと思います。
しかし、病気の初期から全く悩んでいない人は少ないのでは無いでしょうか。
自分が病気とは思っていなくても、何となく、「最近、うまく行かないことが多い」とか、周囲の人から頻繁に注意され、「人間関係が気まずくなっている」とうっすらと感じているのではないでしょうか。

そして、患者さんなりに色々と悩み、本人なりに苦しんでいるのでは無いでしょうか。
ただ、それを自分の中でうまく整理して周りに上手に伝える事ができないので、混乱状態が生じてしまい、それがいわゆる「問題行動」となってしまう事も多いのではないでしょうか。

これから、実際の「問題行動」(行動・心理症状)の代表的なものや、ご家族が疑問に思いやすい症状などを取り上げ、それがどのようにして生じるのか、患者さんはどう感じ考えているのか、想像を混じえながら少し考えていきたいと思います。
よろしくお願いします。