夜、(飼っていないのに)ベッドの脇に来た猫に餌をあげた
代表的な認知症の一つにレビー小体型認知症というタイプがあります。認知症なので少しずつ認知機能が下がっていくわけですが、その前に目立つ、この病気の特徴的な症状として「幻視」があります。
これは夜中などに自分の居る部屋の中にありもしない物が見える現象です。多く見受けられるのは人物(例;子供など)、動物(例;蛇など)です。何もない空間にありありとした実物と区別できない子供や動物などが患者さんには見えます(部屋の中の家具やカーテンなどを錯覚し見間違う場合もあります)。私は経験したことが無いので、推測するしかありませんが、実在の人や動物と同様な存在感を持って見えると言います。ご本人は実在すると信じこんで、タイトルのように、猫が見えれば餌を用意してあげたりします。幻視に対する態度は様々なようで、幻視を怖がり動揺する人もいれば、上記のように幻視と付きあう態度をとる人もいます。
ご家族やご親戚などでこのような話をする方がいらっしゃったら、すぐに否定するのではなく、「本人にはそう見えているのだな」と考えて、その上で対応することをお勧めします。
もちろん、実際には存在しない物である以上、「そんな物は無い。あんたが変なのだ」とはっきり言いたくなるのが自然でしょうが、それでは、ご本人は孤立感を覚え、周囲の人へ不信感を持つだけに終わってしまいます。
具体的には見えていても危険は無いことを柔らかく説明してあげるのはどうでしょうか。
にわかには受け入れてくれなくても、「(自分が実際にそれを体験していることが)分かってもらえた」と思ってもらえるだけで、人は不安がやわらぐものですし、周囲の人に対する信頼も増すのではないでしょうか。
最後に話を複雑にします。
レビー小体型認知症の幻視は意識が明らかに濁っているのではない状態で生じますが、やはり、幻視を訴える症状に「せん妄」という症状があります。
これはいわば病的な寝ぼけの状態で、意識が軽く濁っているのに動き回り、興奮したりする特殊な意識障害の一種です。
この場合も幻視が出現したりしますが、これは意識が濁っている状態で生じる現象でレビー小体型認知症の幻視とは別のものです。
特徴としては、いつもと違って、話がまとまらない。
妙に落ち着かず、興奮している。周囲とコミュニケーションをとろうという構えが見えず、様子から何か見えているようだということが推測できる。
翌日、話を聞いても昨夜の事は忘れているなどがあります。
また、レビー小体型認知症だけでなく、色々な脳の病気で出現することがあります。
最初からお話しているレビー小体型認知症の幻視の場合は見えている最中も会話可能であり、翌日も内容をよく覚えている点が違います。
読んでいて混乱するような話を追加して申し訳ありません。
話を戻します。
高齢者の方が何となく、最近、記憶力などがあやしくなってきた。
それと同時に「昨夜は夜中に○○が出て怖かった」と言った場合は、もしかしてレビー小体型認知症の幻視なのかもしれないと疑って頂きたくて、少し、まわりくどいお話を紹介しました。
上手な説明が出来なくて済みません。