認知症が途中から急に進んだ?
自宅で療養中の認知症の患者さんがいるご家族へのメッセージです。
「かなり物忘れが進んでいるが、まだ、身の回りのことはほとんど出来る。一人で外出は出来ないが、スーパーにつれていけばそれなりに買い物もできる。料理も簡単なものなら調理できる。お風呂にも一人で入れる。それなのに急にボケが進んだ。数日の間に人が変わった。話が通じなくなった。話のつじつまが合わなくなった。食事中も何となくぼんやりしている。夜も布団に入るが、ぐっすり眠る訳では無く、何となく横になっている。まるで、認知症が急に進んだようだ。」
認知症の経過中にこの様な現象が起きることがあります。
結論を言います。
このような場合、何日も様子を見たりしないで下さい。
夜中に救急外来に駆けつける必要はありませんが、気づいた翌日には近くの総合病院を受診させてください。
理由を説明します。
認知症が突然、急激に進行することはありません。
これは何か脳に新しい病気が加わったためです。
新しい病気の種類は色々ありますが、共通しているのはそれらにより、意識が軽く濁ってしまったために、一見、認知症が急に進んだように見えるのです。
ですから、意識が濁る原因となる病状を早く見つけて対処してもらう必要があります。
多いのは脱水(体の水分不足)、肺炎、(新しく薬をもらった後なら)副作用などでしょう。
あるいは(手術が必要になる場合がある)慢性硬膜下血種(小さな頭部外傷で脳の細い血管が切れ、頭蓋骨の内側にじわじわと血がたまる病気)が隠れているのかもしれません。
いずれにしても、今までの認知症とは違って早急に診断してもらい、適切な対応をしてもらう必要があります。
繰り返しますが、普通の認知症が急に進むことはありません(数か月で寝たきりになる特殊なタイプは稀にあります)。
何か新しい病状が加わったと疑う必要があります。このような場合は様子を見ないで速やかに病院受診をお願いします。