-アルツハイマー型認知症のモデルケース-
認知症の患者さんのご家族とお話してよく思うのは、認知症の心理・社会症状(BPSD)とご本人の人柄、人間関係などを混同し、悩んでいる方が多い点です。
4回にわたり、典型的な認知症の4タイプ、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症について順にご紹介したいと思います。
今回はアルツハイマー型認知症の巻です。
モデルケース;85歳女性。高卒、数年間事務員。以後、主婦。夫は7年前に死去。独居。
数年前から妙に物忘れが増えた。(初めは数分前の事を忘れる症状から始まる。ものの置き忘れなど。)
徐々に強まり、最近は同じ話を繰り返す(さっき、話したことを忘れてしまうため。さっき聞いたとは言わないで、そのたびに相槌をうった方がよい)のが目立つ。
頻繁に物を無くす。
近くに住む娘が週に数回ずつ、訪問し、週に1回の買い物他の援助をしていた。
1年弱前から、物が無くなったときに娘が盗ったのではないか(もの盗られ妄想)と疑うようになった。
最初は半信半疑だったが、最近は怒り出す。
説明しても納得しない。
更に、近所へ外出した時に迷子になり(地理を司る大脳の一部が衰えやすいため)、1回、警察に保護された。取り乱し激しく怒り出すようにもなった(易怒的になる事が多い)。
ところが、近所の人へは愛想よく挨拶し、如才なく世間話をする(この認知症共通の特性=「とりつくろい」)。娘は困り果て、とにかく、検査をしようと、渋る本人を説得、本日、受診となった。
なお、会った時、ご本人はスタスタ歩き、一見明るく、なめらかに上手に世間話をしたり出来る人も多くみかけられます。
いかがでしょうか。身近に起きていることと似ていますか?
また、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症は合併することがよくあります。
あるお医者さんからはアルツハイマー型認知症と言われ、別のお医者さんからはレビー小体型認知症と説明され、悩んでしまうご家族がいらっしゃるかもしれません。
両方とも本当な事があり得ると知っていれば、少し、考えを整理しやすいかもしれません。