-前頭側頭型認知症のモデルケース-

認知症の患者さんのご家族とお話してよく思うのは、認知症の心理・社会症状(BPSD)とご本人の人柄、人間関係などを混同し、悩んでいる方が多い点です。
4回にわたり、典型的な認知症の4タイプ、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症について順にご紹介したいと思います。
今回は前頭側頭型認知症の巻です。

モデルケース;68歳男性。高卒。実直な人柄。卒業後、地方公務員となり60歳で定年退職。

その後は妻と二人暮らしをしていた。
ところが、1年前に突然、コンビニで若者向きの雑誌を万引きした(「脱抑制」。脳のブレーキが壊れてしまう)。
最初は説諭されただけだったが、同じ店で1か月後にまた、雑誌を万引きしたため、警察沙汰になった。

自宅では規則的な生活を好み、毎日、午後2時になると、近くの公園を含む同じルートを1時間かけて散歩し、自宅へもどる(毎回、同じコースを迷子にならずに周る。徘徊の特殊な一種)。
迷子になることは無い。
冬に雪が降っていても散歩する。

昔と違って、甘党になった。
最近は、妙に独りよがりになり、自分が言い出したことを曲げない(「我が道を行く」パターンとなる)。
思い付きで新車を注文して、妻が慌てて、それを取り消すこともあった。

更に散歩の途中にアダルトビデオ店の前を通り、10分ほど、その前で立っていることが判明した(脱抑制)。

物忘れも少し目立つようになった。
近くに住む、妻の兄2人、本人の弟が説得し、妻とともに来院した。
なお、前頭側頭型認知症の人は受診をいやがり、病院でも横柄で自分勝手に行動したりします。

気が向くと診察中にふらりと診察室の外へ出て行ったりします。
また、受診のきっかけが上記のように警察沙汰になったためという方も時々見受けられます。

ご家族としてはつらくなってしまうかもしれませんが、あくまで脳の病気の症状に過ぎません。
ご本人の隠れた本質が出たわけでも無いですし、ご家族との人間関係に悩んだ結果でもありません。
考えると切なくなってしまう病状ですが。