心理検査、画像検査の意味

心理検査、画像検査の意味

認知症が疑われた時、ほとんどの場合、心理検査、画像検査が行われます。
今回はこれらの検査の意義についてご説明します。

初めに心理検査の説明をします。心理検査としてほぼ必須なのは簡易的知能検査です。
通常、用いられるのは改定長谷川式簡易知能評価(HDS-Rと省略されます)とミニメンタルステート検査(MMSEと省略されます)の二つです。
最近はこの二つを同時に行う施設も増えているようです。
これらの検査は10分前後で簡単に行える上、認知症の診断に必要な情報が多く得られるため汎用されています。

これらの検査により、認知能力(知能)の低下の程度と、認知能力のどの側面が障害されているかが客観的に把握できます。
また、検査項目が一部異なるので同時に行うことにより、認知障害のパターンの違いを描き出してくれるので診断の補助情報となりえます(例;アルツハイマー型認知症では得点がHDS-R<MMSEとなりやすい)。
また、定期的に測定すると病気の進行具合を客観的にとらえる目安ともなります。

次にご紹介するのは画像検査です。
画像検査は少なくとも1回は受けるべきでしょう。
その理由は二つの大きな意味を持つ情報が得られることです。

その第1は脳の萎縮パターンや虚血病変(脳梗塞の跡など)がわかり、鑑別診断に役立つことです。
血管性認知症なのか、変性型認知症(例;アルツハイマー型認知症など)なのか、あるいは二つの認知症の合併(高齢になるほどよく見られます)なのかに関して大きく役立つ情報が得られます。
それらを鑑別することにより、経過や予後、生じやすい症状の予測、適切な薬剤選択などが可能となります。

第2の点は治療可能な認知症を検出出来る点です。
それらは脳外科的疾患です。
一つは慢性硬膜下血種といい、些細な頭部外傷でじわじわと頭蓋内に出血が続き、認知症症状を呈する病気です。
この場合は手術により認知能力が回復する可能性がありますので、見逃すのは大きな損失となります。
二つ目は(特発性)正常圧水頭症です。
この病気は自然に脳の中の液体(脳脊髄液)が溜まりすぎ、脳を圧迫してしまう病気です。
この病気の場合も手術で脳内の圧力を低くしてあげれば認知能力が回復する可能性があるので、やはり、見逃してはいけない病状となります。
これらの目的のために、認知症を診断する際は必ず一度は画像検査(少なくとも頭部CT検査。出来れば頭部MRI検査)を行うべきでしょう。

なお、診断が確定し、経過を見ている最中に画像検査のフォローを希望するご家族もいらっしゃいますが、それが実際に必要な場面は少ないように思います。