家族が守るべき十条の誓い
今回はご家族が認知症の患者さんと一緒に暮らす場合の注意点を挙げてみました。
以下のお話の第一条から第九条まではアメリカ精神医学会の提言をほとんどそのまま引用したものです。
言葉遣いは私なりにアレンジし、説明を追加しました。
第十条は私個人の意見で、常日頃の臨床で強く感じる点です。ご参考になれば幸いです。
第一条;過度に期待しない。
徐々に能力が低下していく病気です。
過度な期待は本人を苦しめます。
期待は控えめに。
第二条;急速な進行と新たな症状の出現に注意する。
徐々に進行する病気です。
急な変化は、何らかの新しい病状が出現した可能性があります。
速やかにかかりつけの病院を受診しましょう。
第三条;簡潔な指示や要求を心がける。
1回に一件のみ。
短く、わかりやすい言葉で。
第四条;患者が混乱したり怒り出したりする場合は要求を変更する。
基本的にパニックになったと理解するべきです。
本人の限界を超えた要求です。撤回しましょう。
第五条;失敗につながるような難しい作業を避ける。
子供とは異なり、失敗は挫折感と不安をあおるだけで成長は期待できません。
それとなく手助けして、本人が失敗しないような場面設定にしましょう。
第六条;障害に向かい合う事を強いない。
障害に向かい合う事は「自分が徐々に壊れていき、それに抵抗する手段が無い」ことを認めることです。
死にたくなる人は多いでしょう。
第七条;穏やかで安定した、支持的な態度を心がける。
介護者も人間です。
24時間付き合っていれば過労になります。
介護者が一息つける環境を整えるのが大事です。
第八条;不必要な変化を避ける。
この病気では適応力が落ちますので、「なじみの環境」を提供する事が大切です。
環境を変化させるのは出来る限り少しずつにするべきです。
第九条;出来る限り説明し、患者の見当識(日付、場所、その場の人物との関係)が保たれるようにヒントを与える。
患者が不安になる背景として、その場の状況が掴めないことが多いと思います。
出来るだけ、上記の見当識に関する情報を提供するようにしましょう。
第十条;(介護者が)自分自身を責めない。力まない。
家族が介護をする時、子供の場合は追憶から、子供の配偶者の場合は責任感から、「まだ努力が足りない、申し訳ない」と感じがちです。「全力を尽くさなければ」とも思いがちです。
しかし、介護を続けるには、介護者が健康で社会生活を維持していくことが必要です。
長丁場になりますので、息切れしないようにすることも大切です。
してあげたいと思ったことの5割から7割くらいが丁度よいのです。
「少し、手抜きかしら」と思うくらいを目安にして下さい。