認知症の予後
老化に伴う認知症には有名なアルツハイマー型認知症、血管性認知症の他にレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
今回はこのような病気が時間とともにどう変化していくかをご紹介したいと思います。
代表的な病名を4つ挙げましたが、まず、これらを分類したいと思います。
第1のグループは、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などです。第2のグループは一つだけで血管性認知症となります。
初めに第1のグループの紹介をしていきます。
これらはまとめて変性型認知症と言います。
「変性型」と呼ばれる理由をご説明します。
「変性」という言葉は、医療の場面では「健康な体の中には無い異常な物質が体内に出てきてしまった場合」に使います。
変性型認知症の場合は異常なたんぱく質が生まれてしまい、たんぱく質のゴミが脳内に溜まってしまうことが病気の原因となります。
そのため、脳の神経細胞(コンピューターの中のトランジスターのようなもので情報処理の基本単位となる)が少しずつ、壊れていきます。
残念ながら、現在の医学ではこの進行を停止あるいは逆戻りさせることは出来ません(アルツハイマー型認知症のごく初期にレマネカブという注射薬を投与すると一時的に進行を遅らせることは出来ます)。
これらの病気の経過期間全体は10年前後とされています(どのタイプか、合併症の有無などで個人差があります)。
この経過中、特に中ぐらいの時期にいわゆる行動・心理症状と言われる不穏、興奮、徘徊、介護抵抗、幻覚、妄想などが出てきてご家族の心身の強い負担となることがよく見られます。
脳の崩壊がより進むと上記のような症状は目立ちにくくなる傾向がありますが、次第に生活能力全体を失い、話す能力も衰え、食事すらしようとしなくなり、寝たきりになります。
そして、最後は誤嚥性肺炎を繰り返しながら亡くなるというのが典型です。
途中で運動能力の障害を伴う場合もあります。暗い話で申し訳ありません。
それに対して血管性認知症の場合はケースバイケースです。
この病気は典型的な場合、脳の神経細胞に異常が無くても、神経細胞や連絡用の神経の線維に酸素や栄養を供給している血管が少しずつ詰まり、血流が悪くなり、神経細胞などが酸素不足、栄養不足で死んでしまうために起きます。
ですから、血流が悪くなる原因となっている血管の病気の原因次第で予後は変わります。
多くはいわゆる生活習慣病(例;糖尿病、高血圧、脂質異常症など)がその原因でしょう。
そのため、認知症の初期に、生活に関する考え方を変え、今までの生活習慣を見直す、通院・服薬を励行するなどの努力をすれば、(壊れた神経細胞などはどうしようもありませんが、)生活習慣病の改善により、血管病変の進行が停止し、軽い状態を保つことも可能となるわけです。
ただし、第1のグループと第2の血管性認知症の合併例(例;アルツハイマー型認知症+血管性認知症)も多く見られます。
その際は第1のグループの予後と同じとなります。
最近、変性型認知症に対抗する様々な新薬の開発が進んでいます。早く、画期的な新薬が発売されるといいですね。